―存在とは何か

真理への飽くなき追究

美について―ある女の手記

美について―ある女の手記
 
―ある古い手帳を拾ったので開いてパラパラと開いて読んでみる。
 
≪ある女の手記≫
―○月○日
 
付き合い始めた彼と初めてデートする事になった。
姉に半ば強制さてる形で生まれて初めて化粧をした。
 
鏡に映っているコイツは誰だ。
端的にそう思った。
女装している。そう思った。
化粧するとはこういう事か。
 
こうして、徐々に私は女だと、化粧を繰り返す内に思っていくのだろう。
でも、私は男でも女でもどちらの体になる可能性もあった。
女か男の体を持つ前は、つまり、私は女でも男でもなかったという事だ。
たまたまその様な体の性質が私にくっついているだけで、私=女ではない。
女は、ただの性質。特にそこにこだわる必要性はない。
鏡に映っているコイツに女らしくふるまいなさいと言われている様で嫌になり、急いで化粧を落とした。
時計を見ると、もう家を出なくては約束の時間に遅れそうだったので、急いで家を飛び出した。
 
約束の時間にギリギリに到着すると彼はもうついていた。
彼は約束した事は一度も破る事はない。私は彼のそういう所に惹かれている。
 
今日は映画を見に行く事になっていた。
彼はいろいろと今日見る映画は何がいいかと連絡をしてきたが。正直私は何だっていい。
というか、あまり映画というものに興味がない。
今日、何を見るのかという事も正直覚えていない。
 
映画の内容は、恋愛映画だった。
恋に落ちた男女が心中するというなんて事は無い映画だった。
一緒に死んで永遠に結ばれる・・・馬鹿らしいなーとおもって笑ったが、彼はそんな私の横目で目に涙を浮かべていた。
 
映画が終わって何であの時笑っていたのかと彼が聞いてきたから
「だって死んだらどうなるか誰にも分からないじゃない、それなのに、死んだら結ばれると信じて死ぬくらいなら、まだ生きていた方が可能性あったんじゃないの」
と言ったら、「それもそうだね」とはにかんだ。
 
彼が、映画のヒロインが綺麗だったねという話をしたので
「やっぱり私も化粧とかした方がいいと思う?」
と聞いたら、そのままでも十分綺麗だからしなくてもいいと言った。
「そう、私の事はすき?」
そう聞いたら、照れくさそうに好きだと言ったので
「なぜ?」と聞くと
「・・・君が綺麗だから」と照れくさそうにいう。
私は、「それは綺麗な事が好きなの?それとも私が好きなの?」と聞いたら
どっちもという。
じゃあ私が醜くても好きなのか?と聞くと「うーん」と考え出す。
質問を変えて、私が男でも好きかと聞くと「それは好きの意味が変わると思う」という。
でも、好きの意味って何だ。好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い、そうではないのか。
では逆になぜ、私は彼の事に惹かれているのかと考えてみる。
彼の正直な所に惹かれている、いや恐らくそれは後付けの解釈だ。
なぜだかよくわからないが好き。感情は理屈ではない。好きなものは好き、嫌いなものは嫌いなのだ。なぜだかそうなっている。
魂の性質。つまりはそういう所に落ち着くのだと思う。
私も彼と同じように綺麗なもの、美しいものが好きだ。
それは何でだ。好きなものは好きだからだ。魂の性質だ。魂の本質が美しいものだからだ。
だから、魂は自らと同じ美しいものに惹かれるのだ。
花の美しさは、花の中にあるのか、それとも私たちの思いの中にあるのか。
花を科学的に調べても、美しさという物質は無い。どこまでも物だ。
美しさは物ではない。感情だ。思いだ。美しさというものを魂において知っているから、何が美しいか分かるのだ。美しさは私の魂の内にある。
美しいものとは何だ。正しくて善いものだ。
正しいものは何だ。美しく善いものだ。
善いものとは何だ。正しく美しいものだ。
じゃあ魂とは何だ。
正しく、善く、美しい思いだ。
そのような思いが元となって現象として表れたのが
花であったり、自然であったり地球であったり宇宙だ。
 
≪宇宙の航海者≫
 
宇宙に浮かぶ一隻の船 地球
宇宙に浮かぶ一つの奇跡 地球
 
巨大な流れに身を任せ どこに向かおうとしているのか
 
その船が運ぶは魂
 
その意味する所など到底理解の及ばない深淵
 
ただ宇宙が目指すべき所の終わりである究極の『善』
 
その巨大な理念の流れに身をまかせて・・・
 
生きている謎を感じつつ・・・
 
存在の謎を味わいつつ・・・
―手帳に記されているページはここまでのようだ。