―存在とは何か

真理への飽くなき追究

―サンタクロースは何処にいったのか

―サンタクロースは何処にいったのか
 
クリスマス。
朝になるのが楽しみで楽しみで仕方なかった。
あの頃、サンタクロースはいると確信していた。
確かに私の中で実在していた。
サンタクロースはいたのだ。あの時、確実に。
どこに?どの様な形で?
 
自らが作り出した物語と現実が見事にピタリと一致していた。
いつからサンタクロースはいなくなったのか?
 
あの時、私はサンタクロースを必要としていた。
何でも、私の欲しいものを一年に一度くれる親切な白鬚を生やした老人を私は必要とした。
いや、いなくてはならなかったのだ。
サンタクロースがいないという事は、あの時の私には許される事ではなかった。
 
サンタクロースという存在への『願望』がサンタクロースという幻想(物語)を具現化させ、私の中で確固たる実在にまで至らしめていたのだ。
 
サンタクロースはいる(いや、いなくてはならない)という確信と願望によって書かれた「サンタクロースへの手紙」の消失と共に与えられたプレゼント。
 
ほら見ろ!やっぱりサンタクロースは来てくれた。
―あなたが「いい子にしていたからよ。」
サンタクロースは私の強い信念×両親の共犯関係によって具現化したのだ。
 
具現化したサンタクロースが→物語(幻想)へと変わってしまったのはいつからなのか。
サンタクロースがいなくなったのはなぜなのか。
もはや、私がサンタクロースを必要としなくなったからだ。
サンタクロースを生んだのは私だ。
そして、私の手でサンタクロースは殺されたのだ。
私にとってサンタクロースはいた方がいいが、必ずしもいなくてはならない存在ではなくなったのだ。
サンタクロースという存在への願望の低下はサンタクロースという存在に対する確信を疑念に変貌させ、願望という土台の上に成り立っていたサンタクロースの像は足元から崩れ落ちた。
 
『強力な願望は時に幻想(物語)を具現化させ、その者にとって確固たる存在に至らしめる』
 
サンタクロースは、その中のほんの一例。
 
自身が確固たる存在と信じているものも、自身の願望が作り出した幻影かもしれない。
例えば 「救いの神」
例えば 「国家」
例えば 「物質」
例えば 「私」
例えば 「それ」
本当に君の願望が作り出した幻影でないと言い切れるか。
 
さて、サンタクロースはどこからきてどこにいったのか。
 
宇宙創造以前の全意味が混沌とする無限の「意味空間」であるか
 
そしてわれわれもまたそこからきてそこにむかうのか・・・