―存在とは何か

真理への飽くなき追究

幸福と愛について―聖人はこう言った

幸福と愛について―聖人はこう言った。 
 
ある人里離れた森の中に一人の聖人が住んでいた。
真理を求めた青年はその聖人を訪ねて、こう尋ねた。
青年「どうすれば幸福になれる?教えてくれ」
聖人はこう言った
 
「私は何も求めない
求める事、それが不幸の始まりである
幸福を求める事は不幸の始まりである
幸福を求める限り、幸福は訪れない
幸福を求めない事により、初めて幸福は訪れる
 
全てを自然にまかせよ
自然こそ、真理でり、最も善く、最も美しい
あるがままの自然を受け入れその身を委ねよ
何かを為す事はせず、ただ、自然の為されるままに身をまかせよ。
もともと我々は何かを為す事など何一つ出来ないのだから
 
この身は自分の意思で生まれたのか
この身は自分の意思で作られたのか
この自然は自分の意思で作ったのか
この意思は自分の意思で生まれたのか
 
それは求める、求めないにかかわらずやってくる
私のちっぽけな意思などおかまいなしに
真理は万人に知られる事を望んでいるからだ
 
もう気が付くべきだ
私が呼んでいる意思というものが虚構である事を
 
私の意思ですら求める求めないに関わらずやってきたものなのだから
 
 
自然は養いはするが、従属させる事はなく
与える事はするが、求める事はない
 
自然はいかなる評価を与える事もなく
いかなる意味も与えはしない
 
自然は善も悪も見い出さず
全てをあるがままに受け入れ、全てと対等に接する
 
しかし忘れるでない
自然から生まれ自然に還る人の子よ
あなたたちも自然そのものである事を」
聖人はこう言った。
 
青年はまたこう尋ねた。
青年「愛とは何だ?私はどうすれば愛される?」
また聖人は愛についてこう言った。
 
「愛を求めるな
自らを愛せない者は隣人を愛する資格はない
愛を求める者はまだ十分に自分を愛せてはいないのだから
 
自らに愛を注いでも満たしきれない器を隣人の愛で満たそうとするな
自らに愛を注いで、器から溢れ出た愛だけを隣人に分け与えよ
 
そうすれば隣人の愛に飢える事はなく
愛を与えはするが、求める事は無い。
 
自然を見よ!
自然は愛を与えるが、求める事はない
 
私は自然と一体となった
もはや私は存在しない
自然そのものが私なのだから
 
私は孤独を感じず
今や大きな幸福に包まれている」
 
聖人はこう言った。