―存在とは何か

真理への飽くなき追究

ソクラテスと資本主義社会を戦う利己主義者の対話。

ソクラテスと資本主義社会を戦う利己主義者の対話。
 
利己主義者「クソッ!俺の金が!畜生め!トランプの野郎や北のイカレタ野郎のおかげで、株価が下がって、うちは大損だ!ったく日本の政治家達は、こんな時、なんとかするのが仕事だろ!俺らの血税を私欲の為に使いやがって、ああもう、どいつもこいつも使えねぇ!」
ソクラテス「おや、いったいどうしたんだい。悩める若者よ」
利己主義者「なんだ、爺さん。こっちは今忙しいんだ。ほっといてくれ」
ソクラテス「いやいや、どうやら君は今お困りの様に見える。人が困っているのに、どうしてそれを見過ごせるだろうか?それに僕は、見ての通り70歳を超えている。おそらく君の倍は長く生きている。ここは一つ、老人の知恵という物を借りてみんかね」
利己主義者「(なんかめんどい爺さんだな)ああ、そうですか。では一つお聞きしますが、今下落している持ち株、このままでは、うちは大損だ、さてではどうすれば、ここから利益を出せるか、一つ老人の知恵で何とかしてくれませんか?」
ソクラテス「いやぁ、困ったなぁ。僕はそのカブという物がよくわからんのだ。そのカブという物はいったいどんな物なのだい」
利己主義者「はぁ、これだから老人は。いいですか、今の資本主義社会は資本家と労働者に分けられるんです。そして、資本家は労働者の仕事の成果を吸い上げる。いわば、働く者と働く者から利益を吸い上げる者に分けられるんですよ。資本家はその名の通り、金を投資する。株を買ってね。株さえ持っていれば、働かずに、利益を徴収出来、かつその権利を株の売買という形で売り買い出来るんですよ。つまり、世の中、金なんです。金を持たない者は、ひたすら労働に従事し、金を持つ物は、労働の成果を吸い取ってさらに、投資する。金がないと、ずっと負け組。金がればさらに金が舞い込んで得をする。そういう社会なんです。」
ソクラテス「なるほど、金があればあるほど、幸せになるという事だね。そして、君はカブを持っている。つまり、シホンカだから、幸せ者と言う事だ」
利己主義者「そうです!えっへん。私は成功者、勝ち組なんです」
ソクラテス「んーでも、おかしいな。君は金を持っているから幸せなんだろう。でも初めに合った君はまさしく苦しく、悩める者だったよ。ほんとに金を持っていたら幸せなのかな?僕はお金は無いけど、幸せだけど。」
利己主義者「ハハ、金を持っていない負け組の貴方がそんな事いっても、しょせん負け犬の遠吠えですよ」
ソクラテス「うん、確かに僕は金を持っていない。でも何で、金を持っていたら勝ち、持っていなかったら負けなんだい。そもそも君は何と戦って勝っているんだい?」
利己主義者「それは、社会ですよ。この資本主義社会で生きぬく為には勝たなければいけないんです」
ソクラテス「社会ねぇ。僕は社会という物がよく分からないんだ。君の言う社会とは何の事か教えてくれないかね」
利己主義者「はぁ?社会は社会ですよ。」
ソクラテス「うん、だからその社会はどこにあるんだい」
利己主義者「めんどくさいなぁ。だから社会とは、人間が集まる共同体の事ですよ。どこって人間が集まればどこにでもありますよ。一人の人間しかいない社会なんて聞いた事ありますか」
ソクラテス「つまり人間の集まりが社会だという訳だね。」
利己主義者「そうですよ。」
ソクラテス「ところでその人間の集まりの中で勝つ、負けるとはどういう事だい。」
利己主義者「だから、人間の集まりの中では有限である資源や異性の取り合いが起こるんですよ。いかに多くの資源や異性を手に入れる事が出来るか、その競争に勝つか負けるかという事です。」
ソクラテス「でも、僕は何でそこで競争となるのか分からないなぁ。競争しなければいけない理由なんてあるのかい?」
利己主義者「それは、より多く手に入れて得をする為ですよ。少ないと損しますからね」
ソクラテス「何で多く手に入れたら得で、少なかったら損なの?」
利己主義者「それは、多く手に入れた方が生存に有利だからですよ。少なかったら生存に不利じゃないですか。」
ソクラテス「生存に有利、生存に不利、だからどうしたの?」
利己主義者「はぁ?生存に有利だと得するし、生存に不利だと損するでしょ」
ソクラテス「つまり生存する事は得で、生存しない事は損だということだね」
利己主義者「何を当たり前な事を」
ソクラテス「ところで、君は自分の意思で生まれてきたかい。自分で生きようと思って生まれてきたかい。」
利己主義者「そんな訳ないでしょ()どこに、自分で自分を産む奴がいるんですか。俺を産んだのは両親の意思です。」
ソクラテス「じゃあ両親を産んだのは誰の意思だい」
利己主義者「そりゃ、じいさん、ばあさんだろ」
ソクラテス「じゃあそのおじいさん、おばあさんを産んだのは誰の意思だい?」
利己主義者「ああ、そんなのキリがない。初めに人間を産んだ者の意思でしょうよ」
ソクラテス「なるほど、所で人間とは何かね?」
利己主義者「はぁ?生物ですよ」
ソクラテス「生物とは何かね」
利己主義者「生物とは…物質を代謝、自己複製する物ですかね」
ソクラテス「つまり生物は物が集まって出来た物」
利己主義者「そうです」
ソクラテス「物とは何かね?」
利己主義者「原子とか分子とか集まった物でしょ」
ソクラテス「原子とか分子とかは何かね?」
利己主義者「あーもう、全ての物はエネルギーと対価なんです。つまりアインシュタインのあの有名な数式E=mc^2に変換可能なんです。つまり、全ての物質はエネルギーです。これでいいですか」
ソクラテス「なるほど、ではそのエネルギーを作ったのは誰だい。」
利己主義者「はぁ、そんなの知りませんよ。神とかいうんですか、こういう時、熱心な宗教者はハハ()
ソクラテス「では、そのエネルギーを作った理由は何かね?」
利己主義者「そんなの私が知るはずありません。まぁエネルギーの火の玉から宇宙が出来たから、宇宙を創る為、とでも言っておきますか」
ソクラテス「宇宙を作った理由は何かね」
利己主義者「ああもう、だからそんな物、神にでも聞いて下さい。」
ソクラテス「エネルギーを作った理由は分からないだね。つまり、エネルギーを作ったのは損でも得でもない訳だ。」
利己主義者「当たり前でしょ」
ソクラテス「エネルギーが在るのも損でも、得でもない」
利己主義者「そうですね」
ソクラテス「ところで君は、先程、人間は物質の集まりであり、物質はエネルギーでもあると言った。つまり、君の考えによれば、人間はエネルギーであると言う事でいいかね」
利己主義者「まぁ、そういっても問題はないですね」
ソクラテス「そして君はこうとも言った。人間が生存するのは得で、生存しない事は損だとも。」
利己主義者「そうですよ。」
ソクラテス「しかし、君は人間はエネルギーでもあると言った。そしてエネルギーを作ったのは損でも得でもないし、エネルギーが在るのは損でも得でもないとも。つまり、人間がエネルギーなら、人間が生まれたのは損でも得でもなく、人間が生存するのも損でも得でもないという事になるんじゃないかな。」
利己主義者「…まぁ確かに理屈はそうですけど、でも死んでいるより生きていた方がいいでしょ」
ソクラテス「どうしてそんな事言えるんだい?死んでいるより生きている方がいいと判断する為には生と死を比べなきゃいけないよね。所で君は死を経験した事があるのかい?」
利己主義者「いや、無いですけど」
ソクラテス「死を経験した事が無く、生しか経験した事が無いのに、どうして、死んでいるより生きている方がいいと判断できるのだね?」
利己主義者「そんな事言うならじゃあ何であなたは生きているんだ。」
ソクラテス「どういう訳か生まれてきたからだよ、気づけば生を受けていたからだ。それだけの事だよ。それに死の方がいいとも悪いともいえない。つまりどっちも変わらないんだから、わざわざ死ぬ必要も無い。生きる必要も無いが、死ぬ必要も無いからだよ。」
利己主義者「分かりました。じゃああなたをここで殺そうとしても、あなたは抵抗しないんですね」
ソクラテス「僕はかまわないよ。でも君はどうだい。ただ生きいている事はよくも悪くもない、同様にただ死ぬ事もよくも悪くもないという事で僕らの意見は一致した。という事は、生きている事が善い事になるには、自分が善く生きる他ないという事だ。さて、人を殺すのは善悪で考えて善い事かね?悪い事かね?」
利己主義者「まぁ悪い事ですね」
ソクラテス「じゃあ、人を殺したら君は悪い生き方をしてしまうという事になる。つまり生きている事が悪い事になる。」
利己主義者「はぁ」
ソクラテス「では人を助けるのは善い事かね、悪い事かね?」
利己主義者「善い事ですね」
ソクラテス「なら人を助けるのは善い事だから、生きている事が善い事になる。つまり、悪い生き方をすると、生きている事は悪くなり、善い生き方をする事だけが、善く生きる事になるのだ。」
利己主義者「そうかもしれません」
ソクラテス「では、人間の共同体のなかで、自分が、他の者達から、奪ったりするのは善い事かね悪い事かね?」
利己主義者「まぁ善い事ではないですね」
ソクラテス「では、逆に、自分の物を他者に分けあうのは善い事かね、悪い事かね?」
利己主義者「善い事ですね」
ソクラテス「つまり、他者から奪うのは悪い事だから、生きるのが悪い事になり、他者に分け与えるのは善い事だから、生きる事は善い事になるね。」
利己主義者「そうですね」
ソクラテス「初めに君は言った。人間の共同体の中で、他者から利益を奪うと自分が得をして、奪われるのは損だと。」
利己主義者「はい、資本主義社会の基本です」
ソクラテス「でも、それは生存に得か、損かであって、実は生存に損も得もないのだと言う事も意見が一致したね」
利己主義者「そうですね」
ソクラテス「つまり生きる事に損も得もなく、生きる事が善い事になるのは自分が善く生きる他にない。生きる事が悪い事になるのは自分が悪く生きる事に他はないと。」
利己主義者「はい」
ソクラテス「では、君が言うシホンシュギシャカイで戦って、多くの者から奪って自分が得をするのは生きる事に善い事か悪い事か」
利己主義者「・・・・」
ソクラテス「どっちだい」
利己主義者「・・・悪い・・事・・なのか」
ソクラテス「そういう事になるよね。でも生きる事が善い事になるのは、善く生きる事だけだと当たり前を言っただけなんだ。概念にすぎないシホンシュギシャカイの中で、見えない敵と戦って、勝つ事だけが人生になった忙しさで、こんなあたりまえな事を忘れて生きている人が多すぎるんじゃにかとボクは思うね。」
利己主義者「・・・。何か、俺は何の為に、生きているんだろうと分からなくなってきました。」
ソクラテス「何の為に生きるのかではなく、生きるとは何か考えてみる事だね。悩むと考えるは違う。悩むとはどうすれば?、どうしたら?だけど、考えるとはなぜ?何?を問い続ける事なんだよ。悩むのではなく大いに考えたまえ若者よ。」
利己主義者「ええ、すこし「考え」てみます。何の為に生きているのかではなく、生きるとは何かを・・」
ソクラテス「ああ、分かったら教えてくれないか。ぼくはいつでも君の話相手になるよ。いつだって、どこであろうとね。」
利己主義者「はい、また今度いろいろ話ましょう。」
ソクラテス「もちろん、ゼウスに誓って」
利己主義者「なんですかソレ()