―存在とは何か

真理への飽くなき追究

宇宙―それは進化する自己組織化するシステムである

―世界は進化する自己組織化したシステムの一部である。
・宇宙も進化する自己組織化したシステムの1つにすぎない。
・その宇宙の中に地球が存在する。そして地球の中に生態系が、人間が、社会が、心が存在する。これらは、いずれも、進化し続ける自己組織化システムの一部に過ぎない。
 
―自己組織化する宇宙。
・初期の宇宙は、1つの特異点から生じた。ビックバン理論。ここに、量子力学的なゆらぎ(ハイゼンベルグ不確定性原理)により、エネルギー障壁を超え、新たな平衡状態へ移行する。平衡状態に移動する時、時間的、空間的な対称性の破れが生じる。すなわち、宇宙は初期の特異点の状態に戻る事が出来ない。
・現在も宇宙空間は加速的に拡張している事が分かっている。これはつまり、現在の宇宙は新たな平衡状態に落ち着く途中であり、いずれ、安定した平衡状態に落ち着くという事だろうか・・
・もしくは、宇宙は宇宙空間を拡張させる、すなわち、エントロピーを増大させる為の、散逸構造なのかもしれない。宇宙に真空から加え続けられるエネルギーを宇宙という自己組織化した散逸構造が「代謝」によって、エントロピーを排出(宇宙空間の拡大)を行う。
・生物同様に、散逸構造を維持する為には、絶えずエネルギーを取り入れ、エントロピーを放出する事が必要なのだ。
 
―自己組織化する地球。
・地球という惑星も1つの自己組織化する散逸構造と言える。(ガイア理論)
・地球は太陽から自由エネルギーを取り入れ、地球の、惑星システム(大気、生物圏、海洋の循環システム)により、「代謝」する。最終的にエントロピーは増大し、宇宙空間に「老廃物」として放出している。
・重要な事は、平衡状態に落ち着いている散逸構造も、ゆらぎを加える事により、エネルギー障壁を越えて、相転移を起こし、新たな平衡状態に落ち着くという事である。
・これは、酸素と水素を混ぜても反応は生じないが、熱という「ゆらぎ」を加える事によりエネルギー障壁を越え、相転移が生じ、水という新たな平衡状態に落ち着く事と同じである。
・地球も、熱エネルギーの変化という「ゆらぎ」を加える事により、散逸構造が変化してきた。232000年前、222000年前には、シアノバクテリア光合成により、大気の温室効果ガス(2酸化炭素)濃度が減少し、地球全土が氷に覆われ新たな平衡状態に移行した。
・人類の有機物の分解による、2酸化炭素濃度の上昇により100年以内に、新たな相転移を起こすと言われている。相転移を起こした地球は、原始的な地球に戻る。すなわち、嫌気性硫黄細菌の放出する硫化水素による毒性により、人間を含め、現生する多くの生物が絶滅する。ここに新たな嫌気性硫黄細菌とその老廃物であるH2Sを利用する暗黒光合成を行なう細菌の新たな自己組織化した散逸構造に落ち着く様になる。
2酸化炭素の上昇により、地球の温度が、南北の氷冠を溶かす閾値に達する。地球のサーモスタットは海流の循環に依存する。水は比熱が高いので、冷却効率が高い。暖かい空気から熱を奪って、南北に対流により運んで冷やす。冷やされた海水は再び、対流により赤道方面に流れ、気温を下げる。対流が生じているのは、赤道と南北で温度差がある為だ。しかし、南北の氷冠が溶ける事は、赤道と南北の海水の温度差の減少を意味する。海水の温度差の減少は、対流を減少させ、地球のサーモスタットは機能しなくなる。温度の上昇した海の酸素濃度は低下し、多くの海洋生物の死を招く。海洋生物の分解により残りわずかな海水の酸素は使い果たされ、2酸化炭素とメタン濃度の上昇を促進。海水は嫌気性細菌の住処となり、原始の地球に戻る。すなわち、地球にゆらぎを加え、閾値を超えれば、相転移が生じ、あたらな、自己組織化する生物圏へと移行する。このように地球は進化する、自己組織化する散逸構造を持つ。
 
―自己組織化する生物。
・生物とは、進化する自己組織化する散逸構造の一部であるにすぎない。
・生物は、自己組織化するシステムの集まり。代謝とは自己組織化するシステムである。
TCA回路は、絶えず、エネルギーを加えられ、そして、代謝する事によりNADHH+、ATPを放出する。すなわち、自由エネルギーを取り込み、エントロピーを増大させるシステムである。
・固体の、発生と、死のサイクルもすなわち、散逸構造である。この散逸構造のサイクルを維持する為には、絶えず、食べ物(エネルギー)を取り入れ、老廃物排出し、エントロピーを増大させなければいけない。
 
―進化する自己組織化
・平衡状態で安定した自己組織化したシステムも「ゆらぎ」を加える事により進化する。
・従来の進化とはダーウィン的な進化論が中心であった。すなわち環境の変化が生物の進化を促進し、自然陶駄により、選択されるというものだ。
・しかし、これは違う。正しくは、生物圏と環境の相互進化である。すなわち、生物と環境は1つの自己組織化したシステムである。シアノバクテリアは太古の地球の2酸化炭素を減少させ続け、しまいに地球全土を氷に変えた。さらには、地球の酸素濃度を上昇させた。同様に、地球の酸素濃度の上昇、地球温度の低下は、生息する生物に影響を与え、生物の進化を促進させた。
・進化とは変化である。そして、変化はシステムに「ゆらぎ」を加え、閾値に達すると、相転移を起こし、時間的、空間的対称性の破れを生じるのだ。
エントロピーは最大化する。これは、宇宙が時間的、空間的対称性が破れているからだ。
つまり、元の全く同じ状態に戻る事が出来ない。タイムマシンが実現不可能なのは、宇宙が時間的、空間的対称性が破れているからだ。
・「ゆらぎ」とは変化である。DNAの変異は「ゆらぎ」であり、閾値を超える事で、元の生物でいられなくなり、別の生物へと進化する。人間がサルに戻る事が出来ない様に、時間的、空間的対称性が破れている。
・システムの一部を改変する。システムに投入するエネルギー量を変化させる事も「ゆらぎ」を加える事になる。
・他の自己組織化したシステムとの、共生、競争は大きな「ゆらぎ」となり、閾値を超え、進化を促進する。
・真核生物が進化したのは、原核生物ミトコンドリア、シアノバクテリア)との共生に他ならない。捕食者―被食者の競争関係もお互いに進化を促進する事になる。害虫に食害される事により、植物は毒素を生産するという進化を獲得する。害虫は毒素を分解し、自身に蓄積する事で天敵から身を護る進化を遂げる。
・会社を進化させるには「ゆらぎ」を加え続け、閾値を超え、相転移を起こす他に方法はない。新たな事に対し消極的であったり、従来の方法を変更できないと進化する事はできないのだ。進化した自己組織化したシステムは従来より、不利になる場合もあるが有利になる時もある。なので、有利に進化した自己組織化したシステムは、変化しない自己組織化システムに有利に立つ事が出来る。すなわち、進化しない会社やシステムはいずれ、進化した会社、システムに陶駄される運命にある。
 
―人類の進化。
・進化、すなわち、変化には終わりがない。人類も今後、当然進化する。人類の進化を促進する「ゆらぎ」は、宇宙に進出した時の「ゆらぎ」かもしれないし、今後、温暖化により、急激に変化した地球からの「ゆらぎ」かもしれない。もしくは、人類が作り上げたテクノロジーからの「ゆらぎ」かもしれない。
・人類の進化は文化、テクノロジーの進化を意味する。
・文化、科学、テクノロジーは所詮、ホモ・サピエンスの脳により外界を、変換させ、外界に出力したに過ぎない。新しい、新人類の脳の変換装置では、ホモ・サピエンスの脳では入力、変換不可能だったことも行える可能性がある。新人類の脳は現テクノロジーに大きな「ゆらぎ」を与え、テクノロジー相転移パラダイムシフト)を起こす可能性がある。太陽系以外の星への人類の進出には大きなパラダイムシフトが必要とされる。光速に近い速度の宇宙線の開発が何よりも必要だ。
 
―生物の進化
・生物は「ゆらぎ」を片方のみに不均衡に加える。DNAの変異はラギング鎖に不均衡に蓄積される。もう片方には「ゆらぎ」は加えられない。すなわち自身のコピーに変異を加える。生物がコピーを作るのは、変異「ゆらぎ」を片方のみに加える為だ。すなわち、変異を加えた方が不利に働いた場合に備え、バックアップを取っているのだ。変異を加え、相転移が生じ、新たな自己組織化システムが生じても、時間的、空間的対称性の破れが生じているから、元に戻せない為だ。
・会社を進化させる為には、「ゆらぎ」を加える場合、うまく行かなかった時の為に「ゆらぎ」を加えない、バックアップを取っておく必要がある。
・個人の進化についてはどうか。自分自身のコピーは作る事が出来ない。なので、「ゆらぎ」を加える前にバックアップを取っておく事は出来ないが、うまく行かなかった時の為に対策や措置を事前に取っておくことは可能。またうまく行かなかったら、一度、ゼロリセットするしかない。神経に記憶という形で変異は蓄積させているので完全にリセット出来る訳ではない。それでも「ゆらぎ」を加える前に戻って、新たな「ゆらぎ」を加え続けるしか道はない。すなわち、個人の進化は仮説と検証を自分自身で繰り返す他にない。
 
参考文献:自己組織化する宇宙 エリッヒ・ヤンツ